読書感想~カミュ『ペスト』~

ブログの内容に入る前に。
現在、全世界で新型コロナウイルスの感染拡大が進む中、多くの皆様が多大な影響を受けております。日々、医療の最前線で治療に尽力されている医療従事者の皆さまに、心から敬意を表するとともに、深く感謝を申し上げます。また、新型コロナウイルスに感染された皆さま及び関係者の皆さまに、謹んでお見舞い申し上げます。

出張帰りの新幹線駅構内、ふと立ち寄った書店で、最近話題のカミュの『ペスト』があったので、早速読んでみた。想像以上に内容が濃く、深く心に残ったことがあったので、簡単に記録を残しておきたい。

そもそも「ペスト」というと、中世の疫病という印象があるかもしれないが、実は過去3度の大流行を引き起こしている(恥ずかしながら知らなかった)。最初の流行は、6世紀の東ローマ帝国。その次が、中世14世紀。最近読んだ杉山正明の『クビライの挑戦』に記述があったが、クビライが設計した大通商圏の交易によりペストが大流行し、元朝滅亡の引き金にもなったぐらい影響は大きかったようだ。そして最後が、(おそらく今回の舞台に最も近い)19世紀から21世紀にかける大流行である。

本書では、アルジェリアのオラン市で、医師のリウーを中心とする登場人物が、必死にペストと闘う姿を描写している。その描写内容は、現代の新型コロナウイルスによる日本及び世界各国の様相と非常に近い(もはや、似すぎているものを感じる)。

いわゆるロックダウンの状態の中で多くの人が絶望、やりきれない虚無感などを感じながら、自暴自棄に至ったり、日常の生活ではありえないような行動を起こしたりするのだが、そんな中、医師のリウーと、どこからやってきたかわからない謎のタルーとの“とある会話”に心を打たれた。

それは、タルーがリウーに質問した「なぜ、あなた自身は、そんなに献身的にやるんですか、神を信じていないといわれるのに?(略)」から始まった。この質問に対し、リウーは、以下のように答える。

「この先、何が待っているのか、こういうすべてのことのあとで何が起こるか、僕は知りません。さしあたり大勢の病人があり、それをなおしてやらねばならないんです。(略)最も急を要することは、彼らをなおしてやることです。僕は自分としてできるだけ彼らを守ってやる、ただそれだけです。」
「とにかく、この世の秩序が死の掟に支配されている以上は、おそらく神にとって、人々が自分を信じてくれないほうがいいかもしれないんです。そうしてあらん限りの力で死と戦ったほうがいいんです。神が黙している天上の世界に眼を向けたりしないで」

僕は、この言葉をどこまで理解できたか自信はないが、運命や宿命といった自分の眼には見えない力のことを考えるのではなく、ただただ、目の前に現実としてある問題に真正面から向き合う姿勢に感動した。と同時に、改めて、冒頭でも申し上げた現在の新型コロナウイルスの最前線で治療に尽力されている医療従事者の皆さまに尊敬の念を持つと共に、皆さまの気持ちを推し量り、僕自身も目の前にある沢山の経営課題に真摯に向き合っていきたいと思った。

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